院長コラム
「わたし」の取り扱い説明書その8
話/院長・友永淳子
文/副院長・友永 乾史

ヨーガの修行法が確立してきた頃、パタンジャリという賢人によって『ヨーガ・スートラ』という教典が編まれた。その中核となるのが、八支則という教えで、今でもヨーガを学 ぶ上での指針となっている。その最初は、禁戒(ヤマ・しては いけないこと)、二つめに、勧戒(ニヤマ・するべきこと)と続く。 今日はそのニヤマ・勧戒の最後に挙げられる、イーシュワラ・ プラニダーナ(自在神への祈念)について、私なりに解説したい。
今のイラン北部のほうから、馬を引き連れインドまでやっ てきたアーリア人たちには、まだイーシュワラという言葉はなかったらしい。嵐を神とみてルドラとよび、暁を神とみてサヴィトリと呼んだ。しばらくしてからそれらを抽象化して、それぞれを司る背後にある力という意味で、イーシュワラという言葉が作られた。
今、この紙面に光があたって反射し、皆さんの目の網膜に光が当たり、その光が、電気信号となって、脳の中に入っていく。後頭部にある視覚野を通じて、運動野で音声として再体験してから、言語野で皆さんの言葉の記憶と照らし合わされる。そこでこの文章を作る文字のつながりが意味をなし、皆さんと私の間にコミュニケーションが成り立っている。
この紙面にあたる光は、太陽光でも、電気の光でも、元をたどれば、宇宙のエネルギーと呼ぶほかないものである。網膜から電気伯号が脳内を駆け巡ることができるのも、「脳」 と読んで、「脳」をイメージできるのも、今日食べたものが消 化吸収されて、血液に運ばれて、エネルギーとして働くから である。この紙も、これを持つ手も、それを支える身体も、 身体を支える大地も、それもこれも、元をたどれば、すべて は宇宙のエネルギーだと言える。
五感を保ち、意識を保ち、理解をもたらしてくれる、私た ちを成り立たせてくれるすべてのもの、つまりは、宇宙のエネルギーを成り立たせているもの。シバ神を信仰する人はそれ をシバと呼び、クリシュナ神を信仰する人はそれをクリシュナと呼ぶ。それは大日如来でも、ムハンマドでも、イエス・キリストであっても構わない。神という概念になじみが薄ければ、「宇宙の法則」と名付けても構わない。そうしたそれぞ れの名前の、法則の背後にあるものがイーシュワラだ。
こうした宇宙のエネルギーを支えるもの、つまりはイーシュワラワラと同化すること、自分を切り離さないこと、つまり、「結ぶ」ことがヨーガである。結ぶという意味の動詞である)イーシュワラの働きから自らを離さないで、結びつけておくことこそが、ヨーガであって、なによりの「わたし」の取り扱い方法なのだ。だからこそ、イーシュワラを感じ取り、それと同化することが、非常に大切なヨー
ガの土台であって、ここから次のステップである、アーサナやプラーナヤーマヘとつながっていく。
パタンジャリのころには、もうバクティヨーガ、すなわち、イーシュワラ(あるいはその化身である神々)を敬愛するという形のヨーガが成立していた。それを想い、愛し、つねに共にあるという感覚を育むことは、バガヴァッドギータで称揚されているとおりである。
イーシュワラを身体で、呼吸で感じ取ることをハタ・ヨーガ。理解することをジュニャーナ・ヨーガ。それに奉仕することをカルマ・ヨーガという。それぞれ、ヨーガという革新的な自らを扱う方法を現代まで運んで来た。ヨーガが生まれるまでは、人の幸福は儀式や礼拝を通じてしか得られないとされて
いた。ヨーガは、どんな人でも、直接に幸せを手に入れる術」として広まり、お釈迦様の誕生を助ける士壌となった。
今季のレッスン
4月
ヨーガとは何でしょう
アーサナ
胸と脇を開くポーズ
つりばりのポーズ
スフィンクス(コブラ)
胎児のポーズ
プラーナヤーマ
腹式と胸式呼吸
もしくは完全呼吸法
休館日
29日、30日
5月
ヨーガと健康について
アーサナ
日輪拝
立ち木ヤシの木
ワニのポーズ
毛細管運動
プラーナヤーマ
ナディーショーダナ
カパーラバティ
休館日
29〜31日
6月
ヨーガの八つの教え(1)
アーサナ
ねじりのポーズ
前屈or開脚前屈
英雄のポーズ(1-11)
シャバ・アーサナ
プラーナヤーマ
プラーナヤーマ
カパラバティ
ナディーショーダナ
休館日
29 日、30日
7月
ヨーガの八つの教え(2)
アーサナ
太陽礼拝
カタツムリのポーズ
スキのポーズ
逆転のポーズ
プラーナヤーマ
シータリもしくはシートカリ、
ウジャーイ
休館日
29日〜31日