「ヨーガの修行を始めようという人は、なんで自分がヨーガを始めたいのか、よく分かっていないと修行は成功しない」

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スワミ・シバナンダのお弟子さんで、アシュラム随一の哲学者と尊敬を集めたスワミ・クリシュナナンダはよく、こうおっしゃった。

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「本当にそうなのかな？」と、以前は懐疑的だったわたしも、この集中、ダーラナから先については、確かに、なんで自分がヨーガをしているのかがはっきりしていないと難しいと思うようになった。

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では、その、ダーラナとはどういうことなのかを見ていく前に、ここまでお話をしてきたヨーガの五つの部門をおさらいしてみよう。

 

・ヨーガの外的な五つの部門　

第一部門　ヤマ（禁戒）　してはいけないこと

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　アヒンサ　暴力をふるってはいけない　他人にも、自分にも、たとえ心の内でも

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　サッティヤ　嘘をつかない　他人にも、自分にも嘘をつかない　

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　アステーヤ　盗まない　他の人のもの、みんなのものを自分だけのものにしない　

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　ブランマチャリア　エネルギーの無駄遣いをしない　邪な関係を持たない　或いは完全な禁欲　

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　アパリグラハ　むさぼらない　

 

第二部門　ニヤマ（勧戒）　したほうがよいこと　すべきこと

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　シャウチャ　清浄　自身を清潔に保つ　肉体の上でも、精神の上でも

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　サントーシャ　知足　足るを知る　与えられたもの、境遇に心の底から満足をすること　

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　タパス　苦行　自分のすべき仕事に集中すること　

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　スワーディヤーヤ　学習　聖典、経典を読むこと　マントラを唱えること

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　イーシュワラ・プラニダーナ　神への祈念　大いなる存在にすべてを捧げて祈ること　

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第三部門　アーサナ　安定して快適に座れるよう、気息や心の動きを観察できるよう、身体を整える　

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第四部門　プラーナヤーマ　呼吸、気息の調整　その時、その自分にふさわしい呼吸ができるようにする　エネルギーを蓄えておけるようにする

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第五部門　プラティヤハラ　感覚の調整　あちこち、感覚の対象に引っ張られたままでいない

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ヤマ、ニヤマについては、およそどの宗教にも、社会の倫理規範でも説かれているものが多いと思う。

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アーサナやプラーナヤーマは、健康的、美容的効果が大きい。

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世間では、ここがいわゆる「ヨガ」として切り取られて流通している。正しく行うと、姿勢が整い、気息が整った状態を味わうことができ、自然と瞑想がやってくることがある。そうした幸運な人が、この先へと興味をかきたてられる。

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そして、プラティヤハラ。実践しようとする人はぐっと少なくなる。

 

それでも、わたしたちは日々生きる上で、自分の為すべきことへどれだけ意識を集中できるかによって仕事の成果のクオリティが違うことを知っているので、忙しい人ほど、このプラティヤハラを無意識にでも行っている。

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美味しい料理を作る人は、スープの味見をするとき、全意識をその一滴のスープに意識を集められる人だ。

 

部下のやる気を引き出せる人は、その人の気配をよく感じ取って、その人に必要な言葉をかけられる人だ。

 

その瞬間に意識を散漫にさせない。マインドフルネスでいる。仕事のできる人は、自然とプラティヤハラが身についている恵まれた人だ。

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（ちなみに、このような、自分を改善していく方法を意識的に行うことを「ヨーガ」、無意識的にできたことを「進化」と言うと、スワミ・クリシュナナンダはおっしゃる）

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・ヨーガの内的な部門

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こうした、日々の生活規範や、周囲の人々との関わり方、身体の操作と座り方、呼吸の調整、そして感覚の制御というのが、ここまでの「外的部門」で、より内面的な心の操作へ入るのが、ダーラナ＝集中からである。

ヨーガ・スートラ 第三章 第一節　

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Deshabandhah chittasya dharana

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心を、ある定めた一点に置き続けるというということ（集中）がダーラナである。

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では、その一点とはどういった一点なのだろうか。

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ヨーガ・スートラの第一章に、集中の対象に言及がある。

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そこでは、集中が足りないことが、ヨーガの成功の障害であることが説明される。そして、そうした障害を取り除くために、次のようなことがいいと紹介される。

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・感覚の対象について、より深い洞察を得たらそれに集中する（Ⅰ-35）

 

・自然にやってきた、澄み切った、落ち着いた心の状態に集中する（Ⅰ-36）

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・聖者と崇められる人の心を想像して集中する（Ⅰ-37）

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・夢の中で出会った聖なる存在や、聖なる体験、あるいは夢も見ない深い睡眠へ集中する（Ⅰ-38）

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・もしくは、なんでも、好きなものに集中する（Ⅰ-39）

これを拝め、これに心を向けなさい・・と言わないところが、この時代のインドの自由闊達さを感じさせる。ここが、ヨーガが宗教を超えている点である。（この一点がヨーガの価値をぐんと高めたと思う）

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こうした説明だけで合点できて、ヨーガを深めることができる人もいるだろう。

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しかし、スワミ・クリシュナナンダはもう少しおせっかいを焼いてくれる。

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・なぜ集中するのか、何に集中するのか

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スワミ・クリシュナナンダはこういう。

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「なぜ自分が集中をしないといけないのかが分かったら、そして、集中の対象が見つかったら、集中はほぼ成功したと思ってよい」

集中は、難しい。いろいろな条件が整わないと、集中は簡単ではない。

だから、何で、集中しないといけないのか。そして、何に集中したらよいのかが分かったら、そこに集中がやってきてくれる・・というのだ。

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では、ここで練習問題。

まず、この写真のクロッカスに意識を集中してみよう。

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じっと見つめて、しばらく目に、脳に焼き付ける。

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そして目を閉じて、その像を思い浮かべる。

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思い浮かべたまま12秒、保てるだろうか。

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数えながら、集中はできないので、誰かに12秒計ってもらうか、ストップウォッチを活用してみて欲しい。

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思いのほか12秒が長かった人がいると思う。

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そして、これを行っているうちに、「何で自分は写真のクロッカスに意識を向けて、12秒を無駄にしているんだ？」という気持ちがよぎった人もいると思う。

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こうした疑問がわいてくると、あらためてクロッカスに意識を戻して集中することは難しくなる。

あるいは、耳から入ってくる雑音や、他のいろいろな願望や欲望、過去のさまざまなことが沸き上がってきてしまったという人もいると思う。

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それでも、心を一点に向けようとした、そのようにエネルギーを使ったという感覚は、今残っているのではないだろうか。

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そして、ここまでの段階、5つの部門を日々実習している人は、おそらくそんなに苦しむことなく集中できた思う。心を集中させるには、身体と呼吸を伴わせるとうまくいく。

 

練習はここでおしまい。ここでは、わたしたちの、この「心を向ける」という行為の難しさが分かれば大収穫だ。

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お感じになられたと思うが、心は、そんなに簡単に、「一点に集中しよう」と言ったって聞いてくれない。

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・「わたし」というもの​

次はヨーガの考える、「わたし」という存在を簡単に説明したもの。

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わたしたちをロボットに例えてみる。

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五つのセンサーがある。

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目からは光、
耳からは音、
鼻からは匂い、
舌からは味、
肌や内臓からは動きや重さが伝わってくる。

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五つのリモコンがあって、それぞれが動きたいと振動している。

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手は何かをしたい、触りたい、得たいと思い、
足はどこかに行きたい、
口は何かをしゃべりたいし、
生殖器は子孫を残したい
排泄器官は、排泄をしたいと訴える。

絶えず、センサーからの入力と、動きたいと振動するリモコンが響いているのが、いつものわたしたちの内側の状態。

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これに加えて、記憶が浮かんでは消えている。

そして、このロボットの中で操縦しているのは、理性的な大人のわたしではない、よくても5歳になったばかりくらいの好奇心旺盛な子供たちが一人ではなく、たくさんでワイワイやっているのだ。

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「あの光が反射するものを見たいから目をあっちに向けてくれ！」
「いや、おしっこををしたいから、トイレの表示を探して！」
「お腹が空いたな。あのショーウィンドウのシュークリームがおいしそうだ！」

それぞれがこうした欲求を持って騒ぎ立てている。

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その上、
「あの人にこんなことを言われた」いじけている子がいる。
「あの人にこういう風に見られたい」見栄をはる子がいる。

ちらりと見えた初対面の子の顔と、昔、意地悪をされたあの子の顔が似ているからと、またいじめられるのではないかと怯えている子がいる。

自分のことを見てくれないと怒っている子もいる。

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それぞれが廻りを巻き込んで、「わたし」とういロボット操縦の主導権を握ろう、周囲の子全員を自分のムードに染めてしまおうと虎視眈々と狙っている。

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こうした数限りない5歳児たちのいうことを聞きながら、なんとか必要なことをこなしている。こうした状況が普段の「わたし」であるとヨーガは教える。

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とてもではないが、一点に集中しようと言ったって聞いてくれない。

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だから、多くの人は、このダーラナから先ではさんざんな思いをする。

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・心には“無限”がある

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集中は難しい。

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「なぜなら、それはわたしたちの心の奥に、無限があるからなのだ」とスワミジは言う。

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わたしたちの内の五歳児は、実は無限に、無数にいるのだと言う。

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数えきれないだけ、五歳児が詰まっているのがこの胸なのだ。

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だから、「あれをしたい、これをしたい」と叫ぶ子を一人満足させても、その数に限りがないので、わたしたちはいつまでたっても本当の満足を知らない。

悲しいかな、その意味でわたしたちは皆地獄に生きている。

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欲しかったものが手に入っても、すぐにまた違うものが欲しくなる。

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心は無限に欲しがる。

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だから、そこにきちんと“無限”を与えてあげないといけないと、スワミジは言う。

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だから、わたしたちは、「無限なるもの」に集中しないといけないと、スワミジは言う。

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そして、わたしたちは「無限なるもの」を体験して、すっかり満たされてしまわないといけないと。

 

ここで、わたしたちが集中する理由と、理想の集中の対象が明らかになる。

 

１） わたしたちは、無限を内に抱えるがゆえに、感覚の対象では満足できない

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２）だから、無限を集中の対象にしないといけない

 

こう説明すると、よく分かって頂けるのではないかと思う。

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先に上げた、「感覚の対象への洞察」、「心の清澄さ」、「聖者の心のうち」、「夢も見ない熟睡している感覚」などは皆、背後に無限があるものだ。

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・「友永ヨーガ的」集中の対象

他の方法として、身体の部位に集中することを、わたしたちのレッスンでは行う。

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もちろん、これは、わたしたちのヨーガだけの方法ではないのだけれど、他のヨーガを体験されてから、わたくしたちのレッスンを受けた方からお話を伺うと、皆さん口をそろえて、「ゆっくり、やさしい動きで、こんなに解放されたのは初めてです」とおっしゃてくださるので、あえて「友永ヨーガ」という言葉を使った。

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わたしたちは、まずは四肢とその付け根をよくほぐす。首もよくほぐす。

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自然と呼吸が深くなって、外に向いていた意識が身体の微細な感覚をとらえられるようになるように。

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そして、少しずつ大きく身体を動かす。そして、ある形を取る。

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動いている筋肉に、あるいは、バランスをとろうと特定の部位へ意識が向く。

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楽な座り方に戻る。

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動いた後の身体の感覚へ意識を向ける。動く前と動いた後と、心の違いも見てみる。

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緊張と弛緩、吸う息と吐く息、そして息が入りきったときと、出切ったとき。

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それぞれの身体の状態、心の状態をただただ見る。

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その瞬間、瞬間に意識をおき続ける。集中する。

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そのように動いていると、身体は周囲に調和してくる。

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不自然であったところが、自然になっていく。

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心も解放されていく。緊張がほどけて、無辺に広がっていく。

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見続けている、集中している、心と身体という対象が、無限へ、自然へ溶け込んでいく。

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その、瞬間瞬間に変わりゆく心と身体は無限を孕（はら）んで、集中の対象としてふさわしいものになる。

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こうした技法は、もちろん、大勢のヨーガの先生も行っていらっしゃると思う。

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ヨーガ・スートラにも、身体の特定の部位に意識を向けることで、さまざまな超能力を得ると書いてある。（こうした超能力に拘泥することはヨーガの修行の障害になるともきちんと書いてある）

・へそのチャクラに綜制をすることで、肉体の生理機能について知ることができる。（Ⅲ-30）

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・のどのくぼみ（ヴィシュッダチャクラ）に綜制することで、飢えや乾きから自由になる。（Ⅲ-31）

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・クールマのナディ（のどの下に位置する気の通り道）に綜制することで、（心と身体の）安定を得る。（Ⅲ-32）

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・頭頂の光に綜制するのであれば、覚者（悟ったもの-Siddha）の視野を手に入れる。（Ⅲ-33）

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・心臓に綜制をすることで、智慧（ブッディ）、我想（Asmita）、心の働き（Manas）などについての知恵を得られる。（Ⅲ-35）

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集中することの本当に素晴らしい点は、こうした超能力が手に入ることではなくて、集中が習い性になることで、心があちこちに行った状態が好きではなくなってくることだ。

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内に存在する無数の5歳児がたった一人なったようになって、シーンとして一つのことに集中している。

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これがダーラナ、集中である。

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この時、わたしたちは、非常に恵まれた時を過ごしている。

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・集中する対象と集中する時間

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最初はなんでも、好きなもの、心が穏やかになるもの、心を向けやすいものに向ける。（註＊）

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簡単なのは、わたくしどものレッスンのように、身体の部位に意識を向けること。

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そして、次第に集中力がついてきたら、身体の微細な感覚、対象への気づきに集中する。

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気の流れや、気の集まるチャクラと言われるエネルギーのセンターや、気の背後にあるものに意識を向けていく。

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スワミジは、12秒、集中できたら、それはダーラナと呼ぶとおっしゃる。

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数を数えながら、集中はできないので、自分でそこに至ったかどうかは、あとから知るしかない。

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集中した後、心がすっとおちついて、澄み渡っていたら、それは集中がうまくいったということになる。

このように、ヤマ、ニヤマ、アーサナ、プラーナヤーマ、プラティヤハラ、そしてダーラナと順を追ってきて、どうだろうか。

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無理をさせることなく、実によく段階を追って、心の修練の方法を示してくれていることに気づかないだろうか。

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これはつまり、ヨーガの先達たちが心の性質を非常によくつかんでいたことの証拠である。

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ここが、わたしがヨーガを信頼する一番のポイントだ。

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無駄がない。無理がない。どこまでも行き届いているから、どこまでも安心してついて行ける。

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12秒×12回＝144秒　つまり、2分半くらいそこに意識を置き続けることができたら、その集中は瞑想と呼ばれる。八つの部門の第7番目のディヤーナと呼ばれる部門だ。

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次回はそのディヤーナを取り上げる。

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（註＊こうした対象以外にも、グルの写真や、仏像、マリア様の像、様々なシンボル、像に意識が向きやすいのであれば、それも推奨されている。

「瞑想の対象は、完璧さのあらわれであるべきだ。短所があってはいけない。芸術的にきれいで、哲学的に完成していて、精神的に癒してくれるものであるべきだ。理性や芸術的な感受性、あるいは他の何かの見地から、一つでも短所が見つかってしまったら、心はその対象へ向かうことはないだろう。その像はこの世で価値のあることすべての特性をすべて備えているべきである」

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「心を一つに置くというのは、それを選ぶというということを含む。わたしたちは何に集中するのだろうか？わたしたちの伝統では、イシュタ・デーヴァータ(自分の好みの神、守護神)という概念がある。それは、どういった種類のものよいのか、瞑想の対象の性質を指し示すヒントを与える。それは、『イシュタ』（好みの）であり、『デーヴァータ』（神格）でないとならない。それであって初めて、わたしたちは、心のすべてをそこに注ぐように仕向けることができる。わたしたちはそれを、わたしたちの神や女神として、わたしたちの神格として、わたしたちの親友として、愛情を注ぐ標的として、わたしたちの愛そのもの、わたしたちのすべてとして拝めるものでないといけない。それは考えうる限り愛しいものでないとならない。もうそれ以上にわたしたちにとって愛しいものはない、そうしたものを、『イシュタ・デーヴァータ』と呼ぶ。この世において神以外にそうした愛おしいものがあるだろうか。もしこれ以上愛しいものはないというものがあれば、それを集中の対象にしないといけない。そうでないと、心はそこへ向かっていってはくれない。もし、その対象が一番大切ではなく、他の対象と同じように大事であるというのであれば、なんで心はそちらへも向かわないと言い切れるだろうか」（Swami Krishnananda）

 

インドの人の神様への熱い想いが伝わるテキスト。同時に、さまざまな伝統を持つ人への配慮あふれるテキストだと思う。あるいはわたしたちは、このように、熱烈に、具体的な神様の像を拝むという伝統をどこかに忘れてしまっているのかもしれないが、これ！というものが見つかったら、それに意識を集中することも奨励されていることを申し添える）

参考文献：

 

Swami Krishnananda

https://www.swami-krishnananda.org/patanjali/raja_83.html

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ヨーガ・スートラ　英訳 Dr. Sita k Namibiar, The Divine Life Society刊 日本語訳 友永乾史　

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